重炭酸入浴剤を2010年に世界で初めて開発したわけですが、もともとはドイツの温泉保養地「クアオルト」で炭酸療養泉と出会い、その温泉に感動して「日本で広めよう」「家庭のお風呂でもできないか」と思い、研究を始めたのがきっかけです。そして、ドイツの炭酸泉に似た泉質は無いかと日本で探した時に出会ったのが長湯温泉でした。
今回は、長湯温泉と、ドイツのクアオルトに共通する、世界に誇る重炭酸泉についてご説明したいと思います。
記事の目次
いま注目を集めている温泉療養
私が代表を務める株式会社長湯ホットタブで運営している「クアパーク長湯」は2019年にオープンし、温泉療養に適した環境を整え、訪れる人々の健康やリラクゼーションを促進する施設として注目していただいております。先日、日経新聞にも掲載していただきました。
ドイツの「クアオルト」では、治療はもちろん病気にならないための予防医療が進んでおり、これによって医療費が削減されているデータもあると言います。日本でも予防医療が進むと良いですね。
ちなみに、私は1999年にはじめてクアオルトを体験しました。午前中に3時間ほど温泉プールに浸かるのですが、温度が35℃ぐらいなので何時間でも入っていられるほど心地よく、その晩からぐっすり眠れて、1日で時差や長旅の疲労が吹き飛び、大変驚いたことを覚えています。
驚くことに、ドイツの自然炭酸泉はここの湯だけではなく、バーデンバーデンの湯もバード・ナウハイムの湯を分析すると、ph(ペーハー)は6.7から6.9程度で、酸性の炭酸ガスではなく中性の重炭酸イオン泉だったのです。
早速、医学書で炭酸泉の効果のメカニズム、体が温まる機序を読み解こうと勉強を始めました。すると、血液のphは7.35と中性で、液の中のガス運搬は、酸素と重炭酸イオンでした。
酸性の炭酸ガスが血行を促進し体を温めるという理論が当たり前のようになっていて、市販の入浴剤も皆、酸性で設計された炭酸ガス入浴剤だったため、中性重炭酸イオンの入浴剤を作ることができればこれは新しい技術が生まれる発明のチャンスだと思いました。
発明とは常識を覆すこと。新しい本当の入浴剤が作れるはずと発明家の私の本領発揮がやってきましたが、当時在籍していたコニカとは関係がなく、構想だけ練り開発は定年後まで10年近く封印することになったのです。
日経新聞の取材記事で、当時の思い出が蘇ってきたと同時に、さらにこの温泉の効果が改めてよくわかりました。
長湯温泉、クアオルトの特徴
日本の温泉で良く見るのが、泡立つ炭酸ガスの酸性の炭酸泉ですが、長湯温泉もクアオルトも炭酸ガスが中性の湯に溶けこんだ重炭酸イオン泉というのがポイントです。
人間の血管のphは中性なので、中性の重炭酸イオン泉が血行を促進し体を温め、血管を若返らせるのです。手でかき混ぜると「シュワシュワ」とした微細な泡が発泡し、リラックス効果も抜群です。
【長湯温泉】日本が誇る重炭酸泉の名湯
大分県竹田市に位置する長湯温泉は、重炭酸泉(じゅうたんさんせん)として名高く、全国の温泉全体の1%に満たない炭酸泉が豊富に湧出し、日本でも有数の炭酸成分を含む「日本一の炭酸泉」と評される温泉です。泡立つように溶け込んだ炭酸ガスが体にやさしく染み渡り、血行促進や疲労回復に効果があるとされています。
【クアオルト】ドイツで愛される炭酸療養泉の保養地
ドイツのクアオルト(Kurort)は、炭酸成分を豊富に含んだ天然の炭酸泉を持つ療養地として知られ、長年にわたり多くの人々に健康効果を提供しています。ドイツでは「自然療法」として温泉治療が広く浸透しており、医師の指導のもとで療養や運動療法が行われるのが一般的です。
クアオルトでは、血行を改善し、代謝を促進するために温泉が使用され、特に心血管系の健康維持に高い効果が認められています。自然の力で体を整えようとするドイツの医療哲学が息づいており、多くの人々がその効能を求めて訪れる場所となっています。
それぞれの共通点
長湯温泉とクアオルトの共通点を解説します。
長湯温泉とドイツのクアオルト、双方に共通するのは「炭酸成分の豊富な温泉で体を整える」という特徴です。
ドイツの炭酸療養泉は、多くが中性に近いpHを持つのが一般的で、温度がぬるめ(30~35℃程度)のことが多く、これは長湯温泉と同様です。中性付近の泉質は、肌に優しく刺激が少ないため、長湯が可能であり、リラックスしやすい環境を提供します。
また、重炭酸イオンが豊富に含まれ、心血管系への効果が期待されており、リラクゼーションを促す療養泉として活用されています。このため、ぬるめで中性の天然炭酸泉という点で、長湯温泉とドイツの重炭酸泉は大きな共通点があると言えます。その他、以下に両者の共通点を挙げてみましょう。
豊富な炭酸成分による血行促進効果
炭酸成分が肌に吸収されることで血行が促進され、体の隅々まで酸素や栄養が行き渡りやすくなります。これはドイツでも長湯温泉でも注目される効果で、冷え症改善や疲労回復、肩こりの軽減に役立つとされています。
心身をリフレッシュするリラクゼーション効果
炭酸泉に浸かることで感じられる微細な泡がリラックス効果を促し、体の緊張を和らげます。ストレス解消やリフレッシュに最適な環境を提供する点は、どちらの温泉地でも大切にされており、心身の健康維持に寄与しています。
運動療法との組み合わせによる健康増進
クアパーク長湯もクアオルトも、温泉療法と運動療法の相乗効果が推奨されている点で共通しています。血行促進効果が体の準備を整え、その後の軽い運動によってさらなる代謝促進が期待できます。
日本でも予防医療が進むことを切に願う
ドイツの温泉保養地では、「テルメ(Therme)」と呼ばれる温浴施設があり、健康増進を目的にした歩行浴がよく取り入れられています。クアパーク長湯でも、往復100mの源泉掛け流しの歩行浴があり、これらの歩行浴は、特に膝や腰に負担をかけずに全身を動かす運動として注目され、リハビリテーションや代謝促進にも役立つとされています。
ドイツの温泉療養研究は進んでおり、19世紀には世界に先駆け、温泉療養が医療の一環として社会保険制度に組み込まれています。
クアパーク長湯では、2020年9月2日に厚生労働省の「温泉利用型健康増進施設」として認定され、クアパーク長湯の施設利用費および交通費が医療費控除の対象となっています。
適用期間:2020年9月2日から2028年3月31日までの期間が医療費控除の対象
控除を受けるための条件:長湯温泉に1週間以上滞在すること / 世帯における医療費が10万円以上であること / 確定申告をすること
クアパーク長湯
そして現在は、自宅でできる「長湯式重炭酸温浴NO療法オンラインクリニック」もスタートしていますので、ドイツや長湯温泉に足を運ばなくても、家庭のお風呂で重炭酸温浴療法が可能になりました。
今まさに、私が思い描いていた、「日本で広めよう」「家庭のお風呂でもできないか」という理想が現実になってきています。
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